「そんなに時間をかけて査定するんですか?」
お客様から、そのように驚かれることがあります。
実際、効率だけを考えれば、もっと短時間で査定を終えることは可能です。
しかし、私たちは最初から「時間をかけよう」と考えているわけではありません。
結果として時間がかかるのには、理由があります。
それは、お品物だけを見るのではなく、お客様のお話にも耳を傾けながら、一つひとつ確認していくからです。
査定の現場では、
「これはいつ頃ご購入されたものですか?」
「普段はどなたがお使いだったんですか?」
「今回手放そうと思われたきっかけは何だったんですか?」
そんな会話をしながら、お品物を拝見することが少なくありません。
もちろん、金額をお伝えするだけであれば、こうしたお話は必要ないのかもしれません。
それでも私たちは、査定とは単に値段を付ける作業ではなく、お客様が納得して送り出すための時間でもあると考えています。
だからこそ、一つひとつのお品物を確認し、お客様と一緒に考えながら査定を進めていく。
その結果として、一般的な査定よりもお時間をいただくことがあります。
私たちが向き合っているのは、物だけではないからです。
目次
一つひとつのお品物には、それぞれの背景があります
現場で査定をしていると、お客様が自然とお品物について話してくださることがあります。
「これは父が大切にしていた腕時計なんです。」
「若い頃に頑張って買ったブランドバッグなんです。」
「子どもが小さい頃に夢中で遊んでいたおもちゃなんですよ。」
そうしたお話を伺うたびに、お客様にとってのお品物の価値は、市場価格だけでは測れないものなのだと感じます。
もちろん、その背景を査定額に反映できるわけではありません。
査定はあくまで市場価値を基準に行います。
しかし、お客様にとっては、その思い出や背景こそが、一番大切な価値であることも少なくありません。
だからこそ私たちは、査定額だけをお伝えして終わるのではなく、お客様のお気持ちにも耳を傾けたいと思っています。
お品物を手放す理由は、人それぞれです。
お引っ越しを機に整理される方もいれば、ご実家の片付けや遺品整理、お子様の独立をきっかけにご依頼くださる方もいらっしゃいます。
同じ「買取」という言葉でも、その背景は一つとして同じものはありません。
私たちは、その一つひとつの背景に敬意を持ちながら、お客様と向き合いたいと考えています。
「まとめて〇〇円」では終わらせたくありません
お品物が多い現場では、
「全部で〇万円です。」
という査定も珍しくありません。
もちろん、それが悪いわけではありません。
お客様によっては、「早く片付けたい」「まとめて査定してほしい」とご希望されることもあります。
一方で、
「これはいくらだったんですか?」
「なぜこの金額になるんですか?」
とご質問をいただくことも少なくありません。
私たちは、できる限り一点ずつ査定し、その理由も丁寧にお伝えするよう心掛けています。
例えば、
「こちらは現在も人気があり、中古市場でも需要があります。」
「こちらは年式が新しいため、高く評価できます。」
「こちらは再販が難しいため、お引き取り費用が必要になります。」
こうした理由を一つずつご説明すると、
「なるほど、だからこの金額なんですね。」
と安心されるお客様も多くいらっしゃいます。
査定額だけでなく、その理由までご理解いただくこと。
それが、お客様に納得して送り出していただくために欠かせないことだと考えています。
丁寧だからこそ、お伝えできることがあります
査定をしていると、
「思っていた以上に価値があります。」
とお伝えできることもあれば、
「申し訳ありませんが、こちらは再販が難しいため、お引き取り費用が必要になります。」
と、お伝えしなければならないこともあります。
時には、解体や分解をしなければ搬出できない大型家具や、法令に沿った処分が必要なお品物もあります。
そうした場合には、なぜ費用がかかるのか、なぜ買取が難しいのかを、できる限り分かりやすくご説明するよう心掛けています。
私たちは、良いことだけをお伝えする会社ではありません。
お客様にとって耳の痛い現実も、正直にお伝えします。
そのうえで、
「どうすることが、お客様にとって一番納得できる選択なのか。」
を一緒に考えたいと思っています。
買取という方法が最適なこともあれば、ご家族と相談してから決めた方が良い場合もあります。
あるいは、お友達やお知り合いへ譲った方が、お客様にとって満足できる結果になることもあります。
私たちは、契約を急ぐことよりも、お客様が後悔しないことを大切にしています。
急がないことも、一つの提案です
現場では、
「今日中に全部処分しようと思っていました。」
というお客様もいらっしゃいます。
もちろん、お引っ越しやご売却など、ご事情によっては、その日のうちに整理を終えなければならないこともあります。
しかし、査定を進めていると、お客様の表情が少し曇る瞬間があります。
「これは売ろうと思っていたけれど、やっぱり娘に聞いてみようかな。」
「孫が欲しいと言っていた気がする。」
「主人との思い出があるから、もう少し考えたい。」
そんなお気持ちが見えた時、私たちは決して契約を急ぎません。
むしろ、
「迷われているのであれば、今日は保留にしませんか。」
とお伝えすることがあります。
買取や回収は、その日のうちに終わります。
しかし、その選択と付き合っていくのは、お客様ご自身です。
だからこそ私たちは、
「早く決めてください。」
ではなく、
「納得して決めてください。」
という言葉を大切にしています。
現場で教えていただいたこと
以前、ご年配の女性のお客様から、純銀製の大きな記念メダルを査定してほしいというご依頼をいただきました。
重さは100グラムを超える立派なお品物で、銀としての価値も高く、もちろん換金性のあるお品物でした。
査定を進める中で、お客様はご主人様との旅行のお話をしてくださいました。
「この時に記念で買ったんですよ。」
そう話される表情を見ていると、お品物以上に、その思い出を大切にされていることが伝わってきました。
「私もそんなに長くないから、そろそろ整理しようと思って。」
そうおっしゃっていましたが、そのお気持ちと同じくらい、「まだ手放したくない」というお気持ちも感じられました。
そこで私は、
「今日は売らずに、一度保留にしませんか。」
とご提案しました。
その日は、お買取りをせずに失礼しました。
半年ほど経った頃、そのお客様から改めてご連絡をいただきました。
「気持ちの整理がついたから、お願いします。」
その時に初めて、お買取りをさせていただきました。
あの時改めて感じたのは、物を手放すタイミングと、気持ちを手放すタイミングは、できるだけ重なっていた方が良いということでした。
査定とは、お品物だけを見る仕事ではなく、お客様のお気持ちにも寄り添う仕事なのだと、改めて教えていただいた出来事でした。
もう一つ、今でも印象に残っている出来事があります。
お子様が転勤を機に実家を離れ、ご実家の整理をご依頼いただいた時のことです。
子ども部屋にはゲームソフトがたくさんあり、お母様は
「全部処分していいって言われています。」
とおっしゃっていました。
査定を進めていると、一つだけ箱も説明書もきれいに残っているゲームソフトがありました。
何となく気になり、
「こちらだけは、一度お子様に確認していただけませんか。」
とお願いしました。
後日、お客様からご連絡をいただきました。
そのソフトは、お子様が初めて自分のお年玉で買ったゲームだったそうです。
「残せるなら残しておいてほしい。」
というお返事だったため、そのゲームソフトはお買取りしませんでした。
査定額だけを考えれば、小さなお品物だったかもしれません。
しかし、お客様ご家族にとっては、お金では測れない思い出だったのだと思います。
私たちは、そのゲームソフトを買い取らなかったことを、今でも良かった判断だったと考えています。
私たちが目指している買取
私たちは、高価買取だけを目指しているわけではありません。
もちろん、適正な査定額をご提示することは大切です。
一方で、お品物によっては他店様の方が高く評価できることもあります。
そのような場合には、
「ぜひ他店様とも比較してみてください。」
とお伝えすることもあります。
また、今回ご紹介したように、私たちから
「今日は売らずに保留にしませんか。」
とご提案することもあります。
一見すると、商売としては非効率なのかもしれません。
それでも、その方が後悔のない選択につながるのであれば、私たちはその方が良いと思っています。
私たちが本当に目指しているのは、お品物を買い取ることではありません。
お客様が納得して送り出し、そのお品物が再び誰かの暮らしの中で役立つこと。
その橋渡しをすることです。
まとめ
丁寧な買取・引き取りは、時間がかかることがあります。
しかし、それは時間をかけること自体が目的なのではありません。
お客様のお話を伺い、一つひとつのお品物を確認し、ときには一緒に迷いながら、その方にとって一番納得できる選択を考える。
その結果として、お時間をいただくことがあるのです。
私たちは、これからも効率だけを追い求めるのではなく、お客様のお気持ちにも、お品物にも敬意を持って向き合っていきます。
そして、一つひとつのお品物が、また誰かの暮らしの中で役立っていくことを願いながら、橋渡しのお手伝いを続けていきたいと思っています。
一つの物語に、立ち会う喜びと責任を持って取り組むこと。
それが、私たちが大切にしている想いです。